· 

むくげの花

コーヒーローストハウスひびうたは、三重県津市久居の、「幸町」というところにあります。

 

「幸せの町」と書いて、「さやまち」と読みます。

 

この「幸町」の名前をそのまま使ったのが、コーヒーローストハウスの「幸町珈琲」です。

 

軽いお散歩でぐるっと一周回れてしまうくらい、とても小さな町ですが、市の文化財に指定されている「子牛(とき)の鐘」があります。

 

1736(天文元)年に、当時の久居城下に時を知らせるためにつくられたこの鐘は、今では6月10日の「時の記念日」と大みそかの年2回つかれています。

 

この鐘の近くに、松尾芭蕉の句碑があります。

 

「道端(みちのべ)の 木槿(むくげ)は馬に 喰はれけり」

 

木槿は、ハイビスカスによく似た花です。花言葉は、「信念」。

 

「信念がある人」というような言い方をしますが、「信念」って、どこからくるのだろう?と考えてしまいます。揺るぎないもの、確固たるものを持っていると言い切れる人って、どのくらいいるのだろう。

「真実」とは少しちがう、「信念」…

 

コーヒーの仕事をしていると、私が初心者なこともあってか、何が正解なのか分からなくなることがよくあります。

 

どこからが深煎りで、どこまでが浅煎りなのかな、とか、生豆の選別をしていると、この豆は厳しく見れば欠点豆だけれど、欠点豆とそうでない豆のボーダーラインとは、とか。

味の好みも、それぞれだし……とか、とか。

 

けれども、毎日やっていく中で、自然と「これが、ひびうたの、私たちの味」というものが、少しずつできていく気がします。

こういうものを繰り返していく中で、もしかしたらコーヒーに対する「信念」が私の中にも出来てくるのかな?

 

木槿の花は儚く、短期間でしぼんでしまうものも多いそうです。そのため旧暦の秋の季語として、多くの歌人の題材に使ってきたとか。儚く散っていく姿が、刹那的で文学的な感情を呼びやすいのかもしれません。

 

けれども実際には、しぼんでもまた何度も新しい花を何度も咲かせる、粘り強い花でもあります。

花期は長く、梅雨の頃から秋まで花が咲きつづけます。

 

次々と新しい花を咲かせることにちなんでつけられたもうひとつの花言葉は「新しい美」。

 

今日とにかくやってみて、だめでもまた、明日やってみようか

 

よくも悪くも楽観主義な私は、木槿から勝手に、そんなメッセージを感じてしまいます。

 

ひびうたのコーヒーを、お散歩中にフラッと見つけて買っていってくださる方が、時々いらっしゃいます。

 

道端の木槿を食べた芭蕉の馬と、なんだか最近重なって、一人でこっそり嬉しくなっています。

 

 

 

jun